白 江 庵 雑 記



蝶の雑記帳


   目次



 2013年

1. テレビジョン放送に

      見る世の退廃


2. 人物伝あれこれ


3. 邯鄲の夢


4. 世の行く末


5. 意味の深みへ


6. 四季、日に新たなれ


7. コーギヴィルも

       日本の村も


8. もう一人の偉大な師


9. 海辺の老夫

       小説を読む


10. 中国史書の記す

   六〇〇年代の倭国


付録. 果菜園荒地年報

           2013



 2014年

11. 教を読む愚者


12. 浦の今


13. 続六〇〇年代の倭国


14. 鯨回向


15. 海市巡礼


16. 続海市巡礼


17. 詩のように

      書かれた哲学


18. 世界遺産の閑却


19. 中国三昧、三題噺


20. ローカル列車に

       揺られて


19補遺. 魏志東夷伝

      の教えること


21. 永平寺山門に立つ


22. オセアニアとはどこ


付録. 果菜園荒地年報

           2014



 2015年

23. 『ヨーロッパ戦後史』


24. 今この国で


25. ハーバーマスの哲学

         をかじる


26. ピケティ旋風


27. 意識に乗せられて


28. 回想事始め


29. 或る僧の物語


30. 元気を引き出す

         心がけ


31. 他山の石


32 賢者を尋ねて


33 偉大な師への手紙


34 畳の上で死ぬ


35 幻滅とニヒリズムを

        見定める


29b 続或る僧の物語



付録. 果菜園荒地年報

           2015



 2016年

36 日本精神史を

         たどる


37 独り歩む精神を

         たどる


38 鵜飼と稲作の伝来


39 もう一度の

   コペルニクス的転回


40 風景を

   再構成するために


41 わたしは

      どういう者か


42 刀自の昔語り


43 目覚めた人の

      説いたこと


44 文化進化論を

        考える


45 失望の時代


46 陶淵明という人


46b 陶淵明の詩作

     と心境の推移


47 認識と言語の理論

         を学ぶ


48 老生、

     『老生』を読む


38b 稲作と鵜飼をもた

   らした人々のお歯黒



付録. 果菜園荒地年報

           2016



 2017年

49 認識と言語を巡って

         その一


50 認識と言語を巡って

         その二


51 変動する時代と

   人間を描いた文学

    ― 『夜明け前』


52 認識と言語を巡って

         その三


53 生命という

     活動する存在


54 認識と言語を巡って

         その四


55 認識と言語を巡って

         その五


55b認識と言語を巡って

       その五補遺


56 戦争期の日記

        を読む


57 認識と言語を巡って

         その六


58 認識と言語を巡って

         その七


59 測鉛で社会を探る


60 認識と言語を巡って

         その八


61 認識と言語を巡って

         その九


62 或る家の伝承


63 認識と言語を巡って

         その十


64 「太陽の道」の

        考古学


付録. ウィトゲンシュタイ

   『論理哲学論考』

      抜き書き



 2018年


65 認識と言語を巡って

        その十一


66 認識と言語を巡って

        その十二


67 「太陽の道」の

      歴史地理学


68 園丁と蝶の対話余禄


69 「太陽の道」から探る

   日本列島の古代


70 気概の人謝道蘊

     の生きた時代


71 V.パレートの論理的

  実験的科学の方法


72 対馬暖流の

       寄せる岬


73 中国史書が記述する

     500年までの倭国


74 中国史書が記述する

     600年代の倭国


75 終章

   新しい古代史像へ


76 海峡の北への旅


77 新しい

   地質学的時代に


 2019年


78 わたしが暮らす社会


79 teatime


80 胆大小心の人の文学


81 温故知新

    堅実に考えるために


82 身心としてある人間の生


83 言語随想

    堅実に考えるために


84 園丁と蝶の対話

      徳について


85 ボロブドゥール

    寺院の太陽の道


86 頽廃に抗う


85b ボロブドゥール寺院の

   発意者は東大寺大仏を

   知っていたか


87 東大寺と太陽の道

    その先行モデル


88 知的に構成された

   小説「日の名残り」


89 園丁無知を補う


90 一国の転換期


 2020年

91 トルストイの芸術


92 日本列島における

   国家形成をめぐる問題


93 倭国から日本国へ

   王朝交代の仮説理論


94 メモ

 宗教と国家という共同幻想


95 倭国から日本国へ

   の移行を追跡する


96 鎮護国家の寺院

   東大寺の明かす歴史


 2021年

97a 古代史で今問題

   にすべきこと


97b 日本国はどの

   ように成立したか

        結論


98 世界と人間の生

   について その一


99 世界と人間の生

   について その二


100 

  王都太宰府の歴史


101 世界と人間の生

   について

   その三(断章)


102 『生命の論理』

      を学ぶ


102b 『生命の論理』

      抜き書き


103 複雑系生命科学

      を読んで


104 アメリカが

   世界地図を変更


105 危機にある

   村落田畑山海


106 生命はどんな

       存在か


付録 「太陽の道」は

   倭王の居所を指し示す


107 日本神話の

   起源と変遷 前編


 2022年

108 現成公案に挑む

    1.山門に立つ


109 「木から辿る

   人類史」を読んで


109b 巨大古墳の

       考古学 抄


110 日本神話の

   起源と変遷 後編


111 同時代に起きた

   社会と文化の革命


112 行脚、

   または言語ゲーム


113 稲は

    どこから来たか


114 人新生の資本論

       から学ぶ


115 栽培イネ伝播再考


116 『自然と遊戯』

       抜き書き


117-1 科学的認識論

      の構成 一


117-2 科学的認識論

      の構成 二


118 物質代謝と

      経世済民


117-3 科学的認識論

      の構成 三


 2023年

119 ヘルマン・ヘッセの

      『シッダルタ』


120-1 富永仲基の研究

      と道元の禅 一


120-2 富永仲基の研究

      と道元の禅 二


120-3 富永仲基の研究


121 人類進化と文化

  文明の展開は続くか


117-4 科学的認識論

      の構成 四

   「現代認識論」批判


122 社会の変化

  について断片的思索


123 不知火の海に

         響く声


125 転換期に園丁

      途方にくれる


126-1物質代謝論から

 人間と社会を考える(上)


126-3物質代謝論から

 人間と社会を考える3


126-2物質代謝論から

 人間と社会を考える(下)


126-補 .園丁の

  「物質代謝論」註釈


 2024年

127 .生命活動の機構


128 .ゴータマ・

   シッダールタ

     の覚悟


129 .ホセ・オルテガ

      の格言集


130-0 .古代倭国史

   の再構築「序説」


130-1 .古代倭国史

   の再構築第T章


130-2 .古代倭国史

   の再構築第U章


130-3 .古代倭国史

   の再構築第V章


130-4 .古代倭国史

   の再構築第W章


130-5 .古代倭国史

   の再構築第X章


131 .日本の近世近代の

      思想家のこと


130-6 .古代倭国史

   の再構築第Y章


130-7 .古代倭国史

   の再構築第Z章


130-8 .古代倭国史

   の再構築第[章


130-9 .古代倭国史

   の再構築第\章


132 .「マルクスの

 新しい実在論」批判


 2025年

133 .福沢諭吉の

     思想の変遷


134 .運動の三法則と

 理論体系のもつべき

    論理の枠組み


135 .社会という網が

   ほころびた西洋


136 .『パリ燃ゆ』に学ぶ









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       2025年 第133話 −

            2024年 第127話 − 第132話

       2023年 第119話 − 第126話

       2022年 第108話 − 第118話

       2021年 第97話 − 第107話

       2020年 第91話 − 第96話

       2019年 第78話 − 第90話

       2018年 第65話 − 第77話

       2017年 第49話 − 第64話

       2016年 第36話 − 第48話

       2015年 第23話 − 第35話

       2014年 第11話 − 第22話

       2013年 第1話  − 第10話



 蝶は夢見る生き物である。古代中国の哲学書ともいえる古典『荘子』が、すでに見事

に論じている。「わたし荘周は夢で蝶になって(生を)楽しんだが、夢から出たわたしは

果して荘周なのかそれとも蝶の夢の中の人物なのか」、それを断定することはむつか

しいと。この典拠によって日本の俳人は、蝶を荘周と表現する。荘周=蝶という比喩は

定型化されすぎているけれども、この比喩は人生=夢という大きな隠喩を包みこんで

いるのである。人は「考えている自分がいる」と意識する。ところが、何かの機会に自分

の人生を離れたところから観る感覚が湧いてくるとき、その想起が自分の意識から遊離

しているように感じて、夢という言葉を連想する。それを最も巧みに語ったのが荘周の

説話だろう。同じように古今東西の賢人が、人生を語るのに夢という言葉を使っている。

たとえばヨーロッパではW・シェイクスピアが、「われわれは夢と同じもので出来ている。

そしてわれわれの短い一生は、眠りとともに終わる」と表現した。日本でも、賢人と言え

るかどうか分からないが、功成し遂げた人が辞世の句で「難波のことも夢のまた夢」と

詠んだ。物知りの人は、人生と夢を結びつける名言をいくらでも挙げることができる

だろう。



 蝶・荘周・夢という連鎖は、うかつな蝶に、神経回路を巡らすことをそそのかす。そし

て、ふらふらした蝶は実に支離滅裂な夢想を紡ぐことになる。蝶も、揚羽蝶や紋白蝶か

ら名もない小さな蝶まで、その質を異にしているが、荘周がいかなる蝶であったかを

わきまえない者の中に、自分を荘周に似せたい蝶が出るのは夢見る生き物の性で

あろうか。ここに、あの偉大な人を真似て、取りとめもない夢を書き散らそうとする者が

いる。『荘子』を荘周の雑記帳だと考えるのだ。いったんそんな思い違いをした蝶は、

モンテーニュ城の主が籠って書いたのも同じような雑記帳だと解釈を進める。なんという

ことだろう、東西世界にそびえる豊穣な思索の書にあこがれて、微小の蝶にも雑記帳が

書けると誇大妄想するのである。夢にその蝶となっているわたしは、断続的に浮かび

かつ消える想念を文にする作業をしている、ありふれた思いでも文章に表現することは

思索に近づく修練で、ひょっとしたら意味をむすぶかもしれないと期待して。夢の中で

うつつになることがあるとすれば、その空しさに恥じ入ることだろう……。


 この作業もいつか夢のまた夢になるだろうことを半ば意識しつつ。

 

                                 2013年初夏



 来訪者 

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 136 『パリ燃ゆ』に学ぶ


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 135 社会という網がほころびた西洋


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 134 運動の三法則と理論体系のもつべき論理の枠組み


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 133 福沢諭吉の思想の変遷


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 132 「マルクスの新しい実在論」批判


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 130-9 古代倭国史の再構築第\章

      

     700年代からの日本国のことは、『日本書紀』の次の『続日本紀』に

    書かれている。多くの人が700年代からのことはみなよく分かっている

    と思っているけれども、『続日本紀』を真剣に読めば、この日本国には

    前史があったことが明らかになる。

    そして、日本の古代史像が一変して立ち現われる。

     伊勢の皇大神宮は文武天皇のとき建てられたが、それ以前の

    「太陽の道」の神殿は九州の宇佐宮だった。王朝が交代したのだ。


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 130-8 古代倭国史の再構築第[章

      

      『旧唐書』は、2つの節に分けて倭国と日本国とを別々に記述し、

      2つの国が異なる国家であると認識していました。

      この事実を否定することは誰にもできません。

      日本の歴史家は、この問題を説明しなければいけないのに、

      これまで真剣に考えた人はいません、ただ一人を除いて。


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 130-7 古代倭国史の再構築第Z章

      

      第Z章 600年代初頭の倭国

       『隋書』は、隋使の来た倭国がどこにあったか、

       地理にまぎれが生じない精度で告げています。

       朝鮮半島からの距離を比で比較すれば、『三国志』の指示と

       一致します。第@節、図Z.1と図Z.2。


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 130-6 古代倭国史の再構築第Y章

         古墳時代の倭国

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 131 日本の近世近代の思想家のこと


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 130-5 古代倭国史の再構築第X章

     いよいよ第二部に入り、

     4つの時代、弥生時代・古墳時代・600年代初頭・600年代

     に分けて、時代ごとに倭国の具体的な歴史に切り込みます。

     各章のほとんど各節ごとに、多くの人が初めて聞くような論点から、

     新しい論証を提示します。

     この第X章は、いわゆる"邪馬台国論争"をふっとばし、

     目から鱗を取り除いて、新しい視界を開くでしょう。


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 130-4 古代倭国史の再構築第W章

         書かれた歴史資料に切り込むために


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 130-3 古代倭国史の再構築第V章

         日本列島での水田稲作の東進と北進


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 130-2 古代倭国史の再構築第U章

         水田稲作の伝播から学ぶ


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 130-1 古代倭国史の再構築第T章

         太陽崇拝様式「太陽の道」と歴史的変化


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 130-0 古代倭国史の再構築「序説」



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 129 ホセ・オルテガの格言集



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 128 ゴータマ・シッダールタの覚悟



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 127 生命活動の機構



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 126-補 園丁の「物質代謝論」註釈



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 126-2 物質代謝論から人間と社会を考える(下)



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 126-3 物質代謝論から人間と社会を考える 付録


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 126-1 物質代謝論から人間と社会を考える(上)


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 125 転換期に園丁途方にくれる


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 123 不知火の海に響く声


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 122 社会の変化について断片的思索


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 117-4 科学的認識論の構成 補論:「現代認識論」批判


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 121 人類進化と文化文明の展開は続くか


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 120-3 富永仲基の仏教研究と道元の禅三


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 120-2 富永仲基の仏教研究と道元の禅二


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 120-1 富永仲基の仏教研究と道元の禅一


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 119 ヘルマン・ヘッセの『シッダルタ』


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 117-3 科学的認識論の構成 その三


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 118 物質代謝と経世済民


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 117-2 科学的認識論の構成 その二


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 117-1 科学的認識論の構成 その一


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 116 『自然と遊戯』抜き書き


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 115 栽培イネ伝播再考


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 114 『人新生の資本論』から学ぶ


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 113 稲はどこから来たか第2版

      気候地理学的な推論     「蝶の雑記帳113」


 上記のようなタイトルで小さな書物を作りました。2016年に記した蝶の雑記帳

「38と38b」を、さらにさまざまな文献を調べて議論を総合的なものに発展させた

論考です。稲の伝播についてこれまでに書かれた類書を超える内容をもつ、

と自負しています。この論考は、2012年に生物学的なDNAの解析によって、

栽培イネの起源地が中国南端部の広西チワン族自治区を流れる珠江中流域で

あることを明らかにした研究成果に基づいています。ところが、たいていの

書物その他では今でも稲の栽培は長江中下流域で始まった、と書かれています。

それは改められなければなりません。

 新しい発見は、中国南端部からイネが緯度線を何度も越えて北上したと理解する

ことを要求します。この論考は、自然科学の論文のように、一つひとつデータや

証拠を示して論理を組み立て、イネの北上を段階的に説明する綜合的な理論を

提起します。その方法が画期的なのは、これまで考慮されてこなかったこと、

すなわち植物であるイネの生育で最重要な気候条件を明示して考えたことです。

イネがある土地から別の土地に移動するときの気候の差を、月ごとの平均

最高最低気温と降雨量という数値データで表現して議論します。それによって、

栽培起源地からイネがどのようなルートを通って北上し、どこから日本列島に

渡ってきたか、これまでにない確度の高い解答が与えられます。

 その議論のハイライトを次のグラフで示しましょう。





    

このグラフを見て、あなたは、多くの考古学者の言うように朝鮮半島から来た

と思いますか、それとも長江下流域の杭州湾岸域(寧波はそこにあります)から

海を渡ってきたと思いますか。

 くわしい内容は、アマゾンに出品した書物『稲はどこから来たか』でお読み

ください。けっして期待をうらぎることはないはずです。

 参考のために、本の目次を示しておきましょう。

第1章 原日本語の伝来ルート --------------------- 1

第2章 日本の考古学が推定する栽培イネの伝来ルート- 5

第3章 古代朝鮮半島の突帯文土器と無文土器 --------9

第4章 古代の中国北部・朝鮮半島での稲作1------- 13

第5章 古代の中国北部・朝鮮半島での稲作2------- 21

第6章 生物学から見た栽培イネの伝播 ------------- 31

第7章 気候地理的観点からの総合的な議論 --------- 38

 0. 本書の気候地理学的な方法 ------------------- 38

 T. “原初ジャポニカ”が北上した地域 ----------- 48

 U. 栽培イネの長江流域から秦嶺-淮河線を越える北上48

 V. 栽培イネの珠江流域から長江流域への北上 ------55

 W. 珠江流域とインドシナ半島で起きたこと --------60

 X. 熱帯ジャポニカ祖先系統の拡大伝播 ------------65

 Y. 中国東北部と朝鮮半島へのイネの伝播 ----------77

第8章 イネの日本列島への伝来とさらなる伝播 ----- 91

 T. どこから来て日本列島へ上陸したか ----------- 91

 U. イネの東進 -------------------------------- 97

 V. イネの北進 ------------------------------- 102

第9章 水田稲作社会の複合文化 ----------------- 108

 @.鵜飼 ------------------------------------ 108

 A.お歯黒 ---------------------------------- 111

 B.稲作社会の複合文化をもたらした人々 ------- 113

参考文献  ----------------------------------- 121

あとがき  ----------------------------------- 125



「稲作社会の複合文化をもたらした人々」余話

 第9章のB「稲作社会の複合文化をもたらした人々」のところに、日本の歴史に

関係することなので、次のような文を加える誘惑にかられました。しかし、蛇足を

描いて論考全体の推論の質を落とすことをおそれて、とりやめました。その文を

覚書としてここに記録しておきましょう。

 この論考でもそうでしたが、昔の“中国”をどう呼ぶかには悩まされます。

“中国”では代々王朝が国号を建て、その名で呼ぶことが慣例だったので、

国内で安定した呼び名が通用することは妨げられました。外国から“中国”の

領域を指して呼ぶ名は、国号の変化に応じて変わったわけではありません。

古代インドでの“中国”の呼び名は、漢訳仏典の漢字表記「支那」によって

知られるそうです(それは、古代の国家名「秦」からきたのだろうと考えられ

ています)。以後、西の諸国でおおよそそれと似た発音で呼ぶことが続いた

ことを、現代の英語名「China」が教えます。

 昔の日本では、“中国”を「もろこし」や「から」などと呼びました。それを漢字で

表わすときは「諸越」や「唐土、あるいは唐」と書きました。東アジアにあって

中国の強い影響を受け漢字を受け入れたものの、中国語とは音韻体系が

大きく異なるので自国のことばを当てて呼んだものと考えられます。その呼び名が

通用されて、“中国”の王朝が交代して国号が変わっても、呼び名を変えず

漢字表記もそのまま使用したのでしょう。


 ところで、「もろこし」を『日本大百科全書』の「唐土」で調べると、「唐土」の

読み「もろこし」は「諸越」の訓読みからきたと考えられ、その「諸越」は「百越」

と同義だ、と書いてあります。この解説はいくらか「日本と中国の交流史」を

かいま見せ、わたしを思索に誘います。

 今度の『稲はどこから来たか』で、稲を日本列島にもたらした人々は杭州湾岸域

から来た蓋然性が高く、「百越」のなかでも春秋戦国時代に成立した国「越」の

地域の人々と言っても大きな誤りではないだろう、と論じました。その「百越」が

「諸越=もろこし」のことだとすると、もう少し想像を膨らませることができ、

日中交流史を稲の伝来のころにまで外挿して考えることが可能となります。

もちろん、『稲はどこから来たか』にも書いたように、稲を運んだ人々がどこから

来たかは伝承としても伝わらないので、確度の高い話にはならないのですが。

 「諸越」ということばは、『荘子』「逍遥遊第一」に出るれっきとした中国語です。

そこには、「宋人、章甫を資として諸越にゆく。越人は断髪文身にして、これを

用うる所なし」という一文があります。宋の人が宋の名産の章甫という冠をもって

諸越に売りに行ったけれども、越人は断髪しているので冠を使う人がいなかった、

というのです。岩波文庫『荘子』では、「諸越」に「しょえつ」とふりがながふって

あります。このことば「もろもろの越」は、越人のいる諸地方というほどの意味に

なるでしょう。そこでは「越人は断髪文身」としていて、『三国志』が倭人を

「男子無大小皆黥面文身、…、夏后少康之子封於会稽、断髪文身、…、

当在会稽東冶之東」と書くのに対応しています(『稲はどこから来たか』の本文でも

この文に触れました)。ですから、「諸越」はもろもろの越人のいる広い地域を

指すけれども、断髪文身ということばが会稽あたりの越人に焦点を当てている、

ということを示しています。『三国志』は、断髪文身のいわれを会稽の人が

「蛟龍之害を避けるため」とし、それと符合するように、「倭の水人は好んで

沈沒して魚蛤を捕獲するが、文身は大魚水禽を遠ざけるため」と書いています。

倭人と会稽あたりの越人とのつながりを示唆しているのです。


 『荘子』「逍遥遊第一」の話から分かるように、「諸越」は長江流域よりも南の領域を

指します。会稽という地名は今の紹興市を中心とする杭州湾岸域を指し、古くから

その一帯は「越」と呼ばれました。今でも長江流域から南の領域の伝統演劇を

総称して「越劇」ということばが使われます。とりわけ杭州湾岸域には海に親しむ

人々がいたのです。そして、上に示したグラフの一番下の寧波はその地域に

あります。ですから、「もろこし」という呼び名は、稲はその杭州湾岸域の海に

なじんだ人々が船で運んできたという本書の推定と、縁があるのです。

 上のことは日中交流史の前史と言えると思いますが、それをおさえた上で、

昔の日本人が“中国”を「もろこし」や「から」などと呼んだ経緯を探ってみましょう。

「唐土」と書いて「もろこし」と読むところを見ると、「もろこし」という呼び名が

先にあったと考えられます。

 「もろこし」が「諸越」の日本語読みだとすれば、その時代に大陸と行き来した

倭人は「諸越」と呼ばれる地域つまり長江流域よりも南の領域に行っていた、

という理解に至ります。ところが、倭人が中国の歴史書に記録されるようになった

のは『後漢書』や『三国志』で、両書が対象とした時代の後漢・魏と『三国志』の

著された晋の都は洛陽にありました。洛陽は「諸越」よりもずっと北にあります。

その時代に“中国”を「もろこし」と呼んだとするには無理があります。 すると、

倭人が“中国”を「もろこし」と呼んだのはそれよりも後代のことでしょう。

“中国”と本格的に行き来した最初は、400年代の倭の五王の時代です。

洛陽が匈奴に蹂躙されて都を建康に移した東晋と、そのあとの宋・斉…の南朝の

時代です。この時代は中国文明がどっと入ってきた時代と言うことができます。

日本で漢字の発音は「漢音」と「呉音」の二つに大別できますが、「呉音」はこ

の時代に入ってきました。その時代の倭人が、“中国”を「もろこし」と呼んだ

という見方ができます。


 次に“中国”との交流が盛んになったのは、隋・唐の時代です。倭国が隋に使節を

派遣したのは二度で、まもなく隋は滅びてそのあとのかなり長いあいだ唐との

行き来が盛んでした。その時代、“中国”を国号の「唐」あるいは「唐土」と書いた

のです。奇妙なことに、『日本書紀』は「巻22」で、隋との使節の往来を記述する

のにも、相手側を「唐」と書いています(隋という国号を出さない『日本書紀』の

書き方は歴史書の記述として問題をはらんでいますが、たいてい問題に

されません。『日本書紀』編修当時の慣例で“中国”をつい「唐」と呼んでしまった、

と見逃されているのでしょうが、それ以上の事情が隠されているとも考えられます)。

ともかく、何度も遣唐使を送った「唐」が日本国でよく知られるようになって、

「唐」という漢字表記が一般的になったのです。それでも、その「唐」を、それ以前の

呼び方で「もろこし」と呼ぶことが一般的ったのでしょう。「唐」を「から」と呼ぶのは、

あとになって生じた、と考えられます。

 唐よりあと、“中国”から正式の使者が来たのは「元」の時代ですが、それ以前

の宋の時代にも日中間の交易は続いていました。唐以来、日本では、「もろこし」

あるいは「から」という呼び名が慣例になって使われたのです。


 話が散漫になってしまいましたが、これを記したのは、倭の五王の時代の

倭人は、「諸越=もろこし」に行ったとき、自分たちの先祖にそこの越人と同じ

「黥面文身」や「断髪文身」の風習があったと知っていただろうか、という疑問を

いだくからです。また、伝承は記録されなかったけれども、古い時代には、

「稲がどこから来たか」語られていただろうか、という期待をこめた疑問を

いだくからでもあります。


    2022年6月夏至            海蝶 谷川修


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 112 行脚、または言語ゲーム


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 111 同時代に起きた社会と文化の革命


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 110 日本神話の起源と変遷 後編


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 109b 巨大古墳の考古学 抄


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 109 「木から辿る人類史」を読んで


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 108 「現成公案」に挑む 1.山門に立つ


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 107 日本神話の起源と変遷 前編


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 付録 「太陽の道」は倭王の居所を指し示す


    この稿は、八王子の大学セミナーハウスで開催された

    「古田武彦記念古代史セミナー」での講演原稿である。

    これには、これまでの著書や「蝶の雑記帳」で示していない

    図がいくつか含まれているので、付録として公開する

    そのセミナーは古田武彦さんの学説を信奉する人たちの会が

    合同で開催したもので、それらの会に所属しないわたしは、

    飛び入りで発表する機会を与えられた。


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 106 生命はどんな存在か 園丁の独り言


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 105 危機にある村落田畑山海


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 104 アメリカが世界地図を変更


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 103 『複雑系生命科学』を読んで


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 102 『生命の論理』を学ぶ


 102付録 『生命の論理』抜き書き


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 101 世界と人間の生について その三(断章)


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 100 倭国日本国王朝交代論が開く視界

    王都太宰府の歴史


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 99 世界と人間の生について その二


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 98 世界と人間の生について その一


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 97 日本国はどのようにして成立したか 序文と結論


    この稿は、準備中の書物『日本国はどのようにして成立したか

    王朝交代規範からの推論』の序文と第W章「結論」に当たる。

    第T章、第U章、第V章、補論は、この「蝶の雑記帳」で、

    92、93、95、96に収録してある。


    下の97aが序文の、97bが結論のPDFファイルである。

 97a 日本列島の古代史で今問題にすべきこと

 97b 日本国はどのようにして成立したか 結論


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 96 鎮護国家の寺院東大寺が明かす歴史


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 95 倭国から日本国への移行を追跡する


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 94 メモ 宗教と国家という共同幻想


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 93 倭国から日本国へ王朝交代の仮説理論


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 92 日本列島における国家形成をめぐる問題


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 91 トルストイの芸術


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 90 一国の転換期


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 89 園丁無知を補う


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 88 知的に構成された小説「日の名残り」


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 87 東大寺と太陽の道、その先行モデル


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 85b ボロブドゥール寺院の発意者は

            東大寺大仏を知っていたか


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 86 頽廃に抗う


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 85 ボロブドゥール寺院の太陽の道  2019年9月20日決定稿


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 84 園丁と蝶の対話 徳について


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 83 言語随想 ヨーロッパの諸言語


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 82 身心としてある人間の生


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 81 温故知新 堅実に考えるために


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 80 胆大小心の人の文学


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 79 teatime    PDF版


    去年は、論理の厳密さを求められる考察もして肩が凝った。実際に左腕から首までに痛みを感じ、

   お医者さんが、念のためにと核磁気共鳴の画像まで撮らせて頸椎を診察した。もっとも、自己診断では

   へたな体操のせいだったと思う。そういうわけで、今回は肩をほぐすためにお茶の時間にしよう。

   今年、二月四日が立春で続く五日が旧暦の元日というめでたい暦にめぐり会えた。そのとき床に

   掛けた軸のおかげで、とても楽しい時間を過ごすことができた。それは「雑詠日記」に書きつけているが、

   今年の巻が無事に完結するとしても年末になるので、ここに先日の楽しみを記しておく。

 

二月四日立春

 昨晩、細君が今日のために離れの床に「春入千林所々鶯」という掛け軸を

かけた。つられてわたしも、表座敷の床の間に「春水蘆根□鶴立」の軸を掛ける。

七つの淡い模様の上に隷書体で書かれた書で、五文字目の□は前から読めなくて

困っていた。今日は思い立ってインターネットで調べてみて、画像の集まりの中に

同じ文字の句を見つけた。やはり、「翰」の字形で「羽」の部分が「目」と書いてある。

だが、検索して出てくるのは中国語で書かれた記事ばかりで、まだ読めない。

目を移していくと、墨跡を紹介したらしい文に□を「朝」とするものがあった。

□は「朝」の字かもしれない。画像に出てきた書にはこの七言と対になる句

「夕陽楓葉見鴉飜」が並べてあった。じつは、わが家にはこちらの句の掛け軸も

あって、二つの掛け軸は瀋陽でもらったものである。「鴉飜」が「?飛」と書かれて

いるけれども、?は鴉(カラス)の異体字ということだから、文意は同じである。

立春に、「春水蘆根□鶴立」の方だけを掛けたのは、「夕陽楓葉見?飛」が秋の

印象を与えるように思ったからである。

 探索はおもしろい成果をもたらした。この対句はもともと敬愛する蘇軾の

次の詩にあったのだ。

  其二 不用長愁掛月村  檳榔生子竹生孫

     新巣語燕還窺硯  旧雨来人不到門

     春水蘆根看鶴立  夕陽楓葉見鴉翻

     此生念念随泡影  莫認家山作本元

    註:第四句、旧雨は昔なじみ。第八句、家山はふるさと。


 同じ四文字(孫門翻元)で押韻する連作の律詩のうちの第

二首だから、モチーフと形を決めた第一首も掲げておこう。

  其一 老去仍棲隔海村  夢中時見作詩孫

     天涯已慣逢人日  歸路猶欣過鬼門

     三策已應思賈讓  孤忠終未赦虞翻

     典衣剩買河源米  屈指新?作上元

     註:インターネットによると、第五句の賈讓は前漢の人、黄河の河道を変えることを献策、

     のちに左遷されたが復官。第六句の虞翻は孫権に仕え、蘇軾と同じように南方に流された。

     赦免しようとしたときにはすでに亡くなっていたので、子らがとりたてられたという。第七・八句は、

     衣を質入れして南方で有名な米に変え、酒の出来上がる小正月を指折り数えて待っている

     ようすを詠う。

 

 書の軸で元の詩の「看」を“朝”に変えたのは次の句の「夕」と

対照させたと見える。それだと、二句は朝と夕べの情景を歌うことになる。

ところで、この詩は、「春水蘆根□鶴立」の句をキィーワードにして中国語の

「維基文庫」で見つかったのだが、「夕陽楓葉見鴉翻」の句による探索はもう一つの

詩を挙げた。唐の陶?という人の詩「西塞山下迴舟作」で、第五・六句に

「鴉翻楓葉夕陽動、鷺立蘆花秋水明」とあった。蘇軾の詩は本歌取りをしている

のである。考えてみれば、漢詩も和歌と同じく昔の秀句を変奏することをしてきた。

宋代第一の詩人とされる蘇軾は教養が深く、自然に古句を詠み込むことが生じる。

二つの詩を比較すれば、元は秋の詩だったものを、蘇軾が春の詩に変えたことが

知られる。この詩がつくられたのは1100年太陰太陽暦の正月七日と分かっている。

場所は海南島。第二句の檳榔が教えるようにそこは亜熱帯にある。蘇軾が見た

のは鷺ではなくて鶴の一種で、「楓」も紅葉する種とは違うかもしれない。

むしろ、蘇軾はその場の実景を詠んだのではないか。「看」と「見」は二つの文字に

書き分けただけで、夕陽の句と対応させるために前の句に朝をもってくる必要は

なかったのだ。そう考えると、第六句は少し寂しいけれども、詩を、旧暦の正月

蘇軾が静かに見つめている情景としてよいことになる。

 このとき蘇軾は六十五歳。中国の最果て海南島にいたのはそこへ流されたから

である。近世のような宋代にも政争があり、そこへ流された人の中にはマラリアに

罹って果てた人もいた。一対の掛け軸は鶴と鴉のいる情景が好まれたことを教える

が、じつは、第三句に出る燕が鶴や鴉よりも蘇軾の心をとらえているのである。

寒い時期に北から南へ渡る燕は温かくなれば北へ帰って子育てをする。

第三・四句は、旧知のいない土地からの北帰行の願いを表現しているのだ。

蘇軾は、翌年1101年に赦免されたけれども、北へ帰る途上で亡くなった。

この詩に愁いが漂うのはやむをえないだろう。しかしわたしは、

明朗さを失わなかったあのしなやかな精神を見習いたいと思う。

 蛇足を付け加えれば、細君の掛け軸の句は、元は「春入千林所々花、

秋沈万水家々月」という禅の言葉だったのを、千宗旦が、上の句の月並みな

「花」を「鶯」に変えて揮毫したのだという。鶯がいるところ花がある、

という工夫だろう。その「春入千林所々鶯」の軸は、表千家の初釜の床に

かけられる慣例になり、流れ来て浦の苫屋に掛かっている。

 

 さて、雨を交えて内海に白波を立てた昨日の南風も去って、今日は

一陽来復の春であった。

 

五日己亥年元日

 昨日から詩句の林に入って遊んでいた蝶が、今日、蘇東坡の詩に和して

四聯八句の文字列を紡ぎ出した。

     老帰仍棲天涯村  海至世界白潟邨

     已慣課植平静日  朝陽出山入東門

     春海白浦青鷺立  松葉紅梅緑鳥翻

     布衣年々楽人生  苟日々新遊本元

      註:第二句(白潟邨は家山)。第三・四句(課植園に旧雨来ること少な く)。

        第六句(緑鳥は目白、花に鶯とは限らず)。第七・八句(質入れできる衣のない

        下戸の遊楽)。


 四声を知らない天涯の野人は、詩のまねごとをしても相変わらず平仄を無視し、

訓み下して歌うことしかできない。平静な生き方はモンテーニュの勧める徳目だが、

インターネットが言う、出山は仏教でゴータマ・ブッダが修行を終えて山を下りたこと、

西方浄土の入り口は東の門、と。わが庵が内海に面し東岸に岬の山並みを望む

ことを表現したら、思いがけず喜ばしい境地を詠う詩に近づいた。

 

   2019年雨水の候、super full moon hidden by clouds


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 78 わたしが暮らす社会


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 77 新しい地質学的時代に


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 76 海峡の北への旅


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 75 終章 新しい古代史像へ


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 74 中国史書が記述する600年代の倭国


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 73 中国史書が記述する500年までの倭国


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 72 対馬暖流の寄せる岬


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------- 横書きにするにあたって ------------


 麗しい日本文化の伝統を尊重し、これまで「蝶の雑記帳」を縦書きの文書にして

きたけれども、第70話から横書きにすることにした。習慣を改める表記は、日本語の

気分をいくぶん変えることになるのかもしれない。だが、物理量の単位を記したり

ヨーロッパの言葉を表わしたりする便を考慮してそうすることにする。幸い、漢字と

仮名文字は縦横いずれにも対応できる。保守的な政府でさえそうしているのだから、

一般の表記でも早くそうすべきだったのだ。竹簡・木簡を知らない老人が

電子文書に親しむ時代になった。新聞はもちろん、伝統を背負った文人先生方も、

世界の文明に伍するのに、縦のものを横にするぐらいのことはしなければいけない

だろう。それで文章の品格が落ちるなら大したことはないのだ。そんなことを

気にしなくてもすむ気楽な蝶は、左から巡っていく冊子の形式にとまどわない。

絵巻物だって、そうすれば右手で広げながら見ることができたはずなのだ。


 もっとも、「雑詠日記」の方はとりあえず今のままの形にしておく。わたしは、

B5の大きさの横書きノートを日記帳にしていて、思い浮かんだことを記し

雑詠も書き入れるが、分かち書きする語句は一行に収まる。ところが、それよりも

小さい冊子に清書する場合、日づけと「みそひと文字」を一行に収めることが

むずかしいからである。


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 71 V.パレートの論理的実験的科学の方法


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 70 気概の人謝道蘊の生きた時代


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 69 「太陽の道」から探る日本列島の古代


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 68 園丁と蝶の対話余禄


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 67 「太陽の道」の歴史地理学


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 66 園丁と蝶の対話 「認識と言語を巡って」その十二 終章


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 65 園丁と蝶の対話 「認識と言語を巡って」その十一


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 付録 ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』 抜き書き


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64        「太陽の道」の考古学


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 63 園丁と蝶の対話 「認識と言語を巡って」その十


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 62 小小説拾遺五 「或る家の伝承」 PDF版

    この文書は、最近ある居士の文箱から見つかったという。自家の子や孫のため

   に記した覚え書きと見受けられる。文章は少し硬くて艶に欠け、小説とするのは

   気がひけるが、伝承の部分に捨てがたいおもしろみがあるので、とりあえず

   「小小説拾遺」に収録しておく。


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 61 園丁と蝶の対話 「認識と言語を巡って」その九


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 60 園丁と蝶の対話 「認識と言語を巡って」その八


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 59 測鉛で社会を探る PDF版


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 58 園丁と蝶の対話 「認識と言語を巡って」その七


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 57 園丁と蝶の対話 「認識と言語を巡って」その六


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 56 戦争期の日記を読む


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 55b 園丁と蝶の対話 「認識と言語を巡って」その五補遺


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 55 園丁と蝶の対話 「認識と言語を巡って」その五


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 54 園丁と蝶の対話 「認識と言語を巡って」その四


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 53 生命という活動する存在


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 52 園丁と蝶の対話 「認識と言語を巡って」その三


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 51 変動する時代と人間を描いた文学 ― 『夜明け前』


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 50 園丁と蝶の対話 「認識と言語を巡って」その二


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 49 園丁と蝶の対話 「認識と言語を巡って」その一


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 付録 果菜園荒地年報2016


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 38補遺  稲作と鵜飼をもたらした人々のお歯黒 


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 48  老生、『老生』を読む 


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 47  『認識と言語の理論』を学ぶ 


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 46  陶淵明という人 


 46b  陶淵明の詩作と心境の推移 


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 45  失望の時代 


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 44  文化進化論を考える 


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 43  目覚めた人の説いたこと 


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 42 小小説拾遺3  刀自の昔語り 


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 41 わたしはどういう者か 


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 40 風景を再構成するために 


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 39 もう一度のコペルニクス的転回 


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 38 縄を解かれた鵜の空想 ― 鵜飼と稲作の伝来 


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 37 独り歩む精神をたどる 


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 36 日本精神史をたどる 


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付録 果菜園荒地年報2015


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29-2 小小説拾遺一補遺  続或る僧の物語   PDF版


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 35 「幻滅」と「ニヒリズム」を見定める 


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34 小小説拾遺二  畳の上で死ぬ   PDF版


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 33 偉大な師への手紙 


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32 賢者を尋ねて   


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31 他山の石  


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 30 元気を引き出す心がけ ―― 孫たちへ 


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29 小小説拾遺一  或る僧の物語   PDF版


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28 回想事始め ―― 課植園「荒地」園丁の課業    PDF版


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 27 意識に乗せられて


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 26 ピケティ旋風


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 25 ハーバーマスの哲学をかじる


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 24 今この国で ――或るまちづくり協議会設立総会


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23 『ヨーロッパ戦後史』― 日本戦後史の合わせ鏡


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 付録 果菜園荒地年報2014


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 22 オセアニアとはどこか


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 21 永平寺山門に立つ


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  19補遺  『三国志魏書』「烏丸鮮卑東夷伝」の教えること 


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20 ローカル列車に揺られて 


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19 中国三昧、三題噺 


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18 世界遺産の閑却


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17 詩のように書かれた哲学


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16 続海市巡礼  


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15 海市巡礼  


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14 鯨回向


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13 『聖徳太子の真実』が明かすこと 続六〇〇年代の倭国


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12 浦の今


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11 経を読む愚者


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付録 果菜園荒地年報二〇一三  


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10 試論「中国史書の記す六〇〇年代の倭国」 


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9 海辺の老夫、小説を読む


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8 もう一人の偉大な師


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7 コーギヴィルも、日本の村も


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6 四季、日に新たなれ


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5 意味の深みへ


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4 世の行く末


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3 邯鄲の夢


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2 人物伝あれこれ


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1 テレビジョン放送に見る世の退廃