白 江 庵 雑 記












 人間はどんなところに

         生まれて、

 生き物たちの中で

    どんな位置にあって、

 人間と呼ばれる者に

         なってから、

 どんな道を歩んできて、

 どんな人間関係を

         をつくりだし、

 どんな社会ができて、

 ひとりひとりはどんな

     生き方をしてきて、

 今のように

     なったのだろうか。

 

 これから

     どんな生き方が

      できるだろうか。

 





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        孫 に 語 る 歴 史』      





        解 題


     世の中に歴史好きは数多い。わたしなど足元にも及ばない人がたくさんいる。

    そういう人たちを顧みもせず、歴史を語ろうというのは無謀なことと言える。

    ただこの物語は、自分の孫たちに語るということなので、大目に見てもらえる

    だろうか。

     高校生には、よくまとめられた歴史の教科書がある。ところが、高校で歴史を

    選択しなくてもよいというような、怖ろしいことが許されている。また、わたしの

    ような者が歳をとると、高校の歴史教科書に書かれていることを大半忘れて

    しまう。その内容をよく理解している人は、今の世の中では、歴史好きの人たち

    に次ぐ物知りということになる。わたしが、私家版にせよ、教科書とは別に簡単な

    歴史を語ってみようというのは、無益なことなのかもしれない。


     けれども、孫たちに歴史を学んでほしいと考えてみると、教科書に欠点がない

    わけではない。コンパクトな書物に、実にたくさんのことが網羅的に書かれて

    いることである。それは、うがって見ると、試験で知識を検査するのに便利な

    ように書かれている。キイワードを太字にして、できごとを簡潔に記述するの

    は、記憶のためには一つの方便である。しかし、それらがよく頭に入るには、

    くり返しが必要になる。自分の高校生のときを想い出してみると、そうやって

    勉強して、必ずしも森を見ていなかったと思う。


     この物語で、わたしが漠然とながら心がけたことを挙げてみると、次のような

    ことである。

     まず、歴史を物語として語ること。耳で聞いて胸に響くような文章にすること。

    歴史事実を、できるだけ物語としてつながるように語ること。適当な分量で一応

    の理解を得られるように、取り上げることがらを選択すること。物語のあいだに

    言葉を足して、歴史の大局に注意が向かうようにすること。なるべく年代で時代

    区分し、ヨーロッパ、西アジア、中国、日本の歴史を並べて、比較して見る視点

    を与えようとしたこと。日本史を切り離さず、世界史の中に置いて見ようとした

    こと。歴史上の尊敬すべき人たちや作品を、ただ名前を知るだけにしないで、

    そういう人たちに関心を誘うようにしたかったこと。創造神話で始まる歴史書を

    みならって、人間の歴史を、宇宙史と生物史の中に位置づけようとしたこと。

    ・・・・・・・・・などである。


     しかし、それらのことを実現するほどの力が足りず、わたしなりの工夫は十分

    成功してはいない。それでも、孫たちがこの物語に耳を傾けてくれるほどの語り

    になっていることを願う。語り部の意図が伝わって、それなりの歴史をつかんで

    ほしい、と願っている。


        

          2012年8月                 白江庵で記す。



     下巻がなんとか成った。ただ、現代に近づくほど物語性の薄れた語りに

    なっているのではないかと危惧する。主観的な感想もまじっている。それだけ

    切実で、距離をとって見ることができないからだろう。ともかく、『父が子に語る

    世界歴史』ならぬ『孫に語る歴史』上下十章ができた。J. ネルーではない無謀

    な者は、拙いながらもひとつながりの歴史を語っているつもりになっている。

    耳を傾けてくれる人があるだろうか。


        

          2013年3月                 谷川 修






                  目 次


             扉・はじめに・目次 


      第1章  歴史のあけぼの    ・・・・・・・・・・・・・   1


      第2章  文明のはじまり    ・・・・・・・・・・・・・   21


      第3章  古代          ・・・・・・・・・・・・・   47


      第4章  中世前期       ・・・・・・・・・・・・・   89


      第5章  中世後期       ・・・・・・・・・・・・・  131



             下巻目次 


      第6章  近世前期       ・・・・・・・・・・・・・  181


      第7章  近世後期       ・・・・・・・・・・・・・  223


      第8章  近代前期       ・・・・・・・・・・・・・  255


      第9章  近代後期       ・・・・・・・・・・・・・  299


      第10章  現代         ・・・・・・・・・・・・・  339


             あとがき 



 new   第4章の123-125ページで、日本古代史の定説に批判的に書いたが、

      その論拠を次の小文で論じている。


      付録  1. 試論「中国史書の記す六〇〇年代の倭国」


           2. 『聖徳太子の真実』が明かすこと


           3. 『三国志魏書』「丸烏鮮卑東夷伝」の教えること






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